アコースティックギターの弦は、使うほどに汚れや錆び、伸びが進み、音がこもったりチューニングが合いにくくなったりします。弦交換は初心者でも自宅でできる作業です。ここでは、弦メーカーや楽器店のガイドを照らし合わせて、一般的な手順と交換の目安をまとめます。
準備と安全面で気をつけること
用意するものは、新しい弦のセット、弦を切るニッパー、あれば便利なペグ巻き、チューナーです。ギターを置く場所には柔らかい布を敷き、ボディやネックを傷つけないようにします。弦のセットは、普段使っているゲージ(太さ)に合うものを選びます。種類がわからないときは、古い弦のパッケージを控えておくか、楽器店で相談すると安心です。「ゲージ」「ブリッジ」などの言葉に迷ったときは、ギター用語集も参考にしてください。
- 外した弦や切った弦の先端は鋭く、手や目を傷つけるおそれがあります。弦がはね返ることもあるため、先端の向きに気をつけて作業してください。
- 6本を一気に外すと、ネックにかかる張力が大きく変わります。負担を抑えるため、2本ずつ外して張り替える方法を紹介しているメーカーもあります。
作業で出てくる部分の名前
- ペグ:弦を巻いて音程を変える部品です。
- ナット:ヘッド側で弦を支える、指板の端の部分です。
- ブリッジ:ボディ側で弦を固定する部分です。
- ブリッジピン:弦の玉をブリッジに留めるための、小さな栓です。
- ボールエンド:弦の端にある玉の部分です。
アコギの弦交換の手順
細かい流れは情報源によって少しずつ異なりますが、おおむね次の順番です。
- ペグを回して古い弦を十分にゆるめ、張力を抜いてから切って外します。
- ブリッジピンを抜いて、ブリッジ側の弦も取り除きます。弦を外したときは、指板やボディの汚れを拭き取るよい機会です。
- 新しい弦の玉(ボールエンド)をブリッジの穴に入れ、ブリッジピンで留めます。軽く弦を引いて、しっかり固定されているか確認します。
- 弦をヘッド側のペグの穴に通し、少したるませます。たるみの量は、ある楽器店では6・5弦で約1フレット分、細い弦ほど多めという目安を紹介しています。
- 弦がほかの巻きと重ならず、きれいに並ぶように注意しながらペグを巻いていきます。巻く向きを間違えないよう、ペグの向きを確かめましょう。
- チューナーで音程を合わせます。余った弦の切り方や切るタイミングは案内によって異なるため、先端に注意して処理してください。
ペグに巻くときは、巻きすぎにも注意が必要です。巻く量が多すぎると弦に余計な負担がかかり、切れやすくなるとされています。逆にたるみが少なすぎると、音程が安定しにくくなります。適した巻き数は弦の太さやギターによって異なるため、一律の数字にこだわらず、弦がきれいに並んでしっかり固定される量を目安にしてください。
初心者向け:1本ずつ張り替える流れ
不安なときは、1本ずつ張り替える方法がおすすめです。ネックにかかる力が大きく変わらず、弦の順番も迷いにくくなります。
- 6弦をペグでゆるめ、たるんだ状態で切って外します。
- ブリッジピンを抜き、古い6弦を取り出します。ピンは小さいので、なくさないように手元の皿などに置きます。
- 新しい6弦のボールエンドをブリッジの穴に入れます。ピンの溝に弦が沿うように向きをそろえて、ピンを差し込みます。
- 弦を軽く引き上げながら、ピンが浮かないところまで押し込みます。
- 弦をペグの穴に通し、少したるませてから巻き始めます。
- 弦が張るところまで巻いて、チューナーで大まかに合わせます。この段階では、完全に合っていなくても大丈夫です。
- 5弦、4弦と同じ作業をくり返し、最後に1弦まで張ります。
- 全部張り終えたら、もう一度6弦から順に細かくチューニングします。
交換の目安はどのくらい?
交換の頻度は、弾く時間や手の汗、湿度などで人によって異なります。参考として、弦メーカーは「1〜2か月に1回程度」、ある楽器店は「最低でも月1回程度、湿度の高い時期は2週間ほど」、別のメーカーのブログは「頻繁に弾く人で2週間ごと、趣味で弾く人で2〜3か月ごと」といった幅のある目安を挙げています。つまり、一般には1か月前後を一つの目安に、自分の使い方に合わせて調整するとよいでしょう。コーティングの有無などで弦の持ちも変わるといわれるため、買った弦のパッケージ表記も参考になります。
回数よりも、次のようなサインを見て判断するのがおすすめです。
- 弦に錆びやくすみが出ている
- 音がこもる、伸びなくなった
- チューニングがすぐ狂う
- 指触りが悪く、押さえにくく感じる
サインが分かりにくいときは、新しい弦と古い弦を並べて、色や手触りを比べてみると違いが見えやすくなります。
張り替え直後のチューニングと注意
新しい弦は伸びるため、張った直後は音程がどんどん下がります。チューニングをしたあと、弦を軽く持ち上げて伸ばし、再びチューニングする作業を数回くり返すと安定しやすくなります。ただし、強く引いたり、急に音程を上げすぎたりすると弦が切れることがあります。ペグを巻くときも力を入れすぎず、少しずつ合わせましょう。張り終えたら、ブリッジピンが浮いていないか、弦がペグのまわりで絡んでいないかも、あらためて見直してください。チューニングの手順そのものは、ギターのチューニングのやり方で紹介しています。
参照:D’Addario「How to Restring an Acoustic Guitar」
参照:島村楽器 Update!「アコギの弦交換のやり方|ギター初心者でも自宅で簡単にできる方法!」
参照:Fender「The Easy Way to Change Your Acoustic Guitar Strings」
参照:島村楽器 Update!「【ギター】弦の替え時ってどんな時?! ~交換時期の見分け方~」
参照:Taylor Guitars Blog「How Often Should You Change Guitar Strings?」
参照:Yamaha Music「Guitar Basics Part 2: How to Change Strings on an Acoustic Guitar」
弦の種類の選び方
アコースティックギター用の弦には、素材やコーティングの違いがあります。代表的なものとして、明るく張りのある音といわれる「80/20ブロンズ」と、温かみのある音といわれる「フォスファーブロンズ」があります。表面に薄いコーティングを施した弦は、錆びにくく寿命が長いとされる一方で、価格が高めです。どれが合うかは好みや弾く頻度によって変わるので、まずは店頭で勧められる標準的なものから試してみるとよいでしょう。
弦の太さ(ゲージ)の目安
弦の太さは「ゲージ」と呼ばれ、代表的なものに、エクストラライト(1弦から6弦がおおむね.010〜.047インチ)とライト(おおむね.012〜.053インチ)があります。細いほど押さえやすく、太いほど音量や張りが出やすいといわれます。初心者は、押さえやすいエクストラライトやライトから選ぶ人が多いようです。
これまでと違うゲージにすると、押さえたときの感触や弦の張りが変わります。ギターによっては、合わない太さもあるため、不安なときは楽器店に相談してみましょう。また、切れたときに慌てないよう、予備の弦を1セット用意しておくと安心です。
交換のときに一緒に見たいところ
- 指板の汚れ:弦を外したタイミングで、乾いた柔らかい布で拭いておく。
- ペグのゆるみ:回したときにぐらつく場合は、ネジが緩んでいないか確認する。
- ブリッジやブリッジピン:ひびや浮きがないかを見る。
- ナットの溝:弦が引っかかっていないか、極端に傷んでいないかを見る。
よくある失敗と対策
- 巻く向きを間違える:ペグは弦を内側に巻き込む向きなので、ほかの弦と同じ向きになっているか確認する。
- 巻きすぎ:ペグに巻く回数が多すぎると、チューニングが安定しにくくなります。細い弦ほど多め、太い弦ほど少なめに巻くのが目安です。
- ボールエンドの向き:ブリッジピンの溝に弦が沿っていることを確認してから、ピンを差し込む。
- 余った弦の先端:切るときに跳ねたり、指に刺さったりすることがあるので、短く切る際は注意する。
つまずきやすい点と直し方
多くの人が、次のような点でつまずきます。
- ブリッジピンが浮いてくる:ボールエンドが正しい位置に収まっていないことが多いようです。ピンを抜いて弦を軽く引き、溝に沿わせてから差し直します。
- 張った直後にすぐ音が下がる:新しい弦が伸びているためで、故障ではありません。チューニングを何度かやり直しましょう。
- 弦がペグの上で重なる:巻き始めの数回を、指で弦を軽く押さえながらそろえると並びやすくなります。重なってしまったときは、少しゆるめて巻き直します。
- ビビり音が出る:弦の収まりや押さえ方など、原因はいくつか考えられます。探し方は音がビビる・鳴らないときの確認ポイントで紹介しています。
交換後に音が安定するまで
新しい弦は、張ったあとしばらくは伸びて、チューニングが何度も狂います。軽く弦を持ち上げて伸ばし、再度チューニングする作業を繰り返すと落ち着きやすくなります。ただし、強く引っ張りすぎると切れる原因になるので、ほどほどにしてください。数日弾き込むうちに、安定していくのが一般的です。
弦交換に慣れるための練習メニュー
最初から手早くやろうとしなくて大丈夫です。回数を重ねるうちに、手順は自然と身についていきます。
- 1回目:説明を見ながら、1本ずつ時間をかけて張り替えます。巻く向きとピンの向きだけを意識します。
- 2回目:手順を見ずに、順番を思い出しながら張ります。迷った箇所をメモしておきます。
- 3回目:たるみの量と巻き数を意識して、ペグの上がきれいに並ぶように巻きます。
- 4回目以降:6本を張り終えたあと、チューニングを何度かくり返し、音程が落ち着く様子を確かめます。
作業のたびに、「何分かかったか」より「ていねいにできたか」を振り返ると、失敗が減りやすくなります。
交換後のチェックリスト
作業を終えたら、次の項目を見直しましょう。
- 6本すべての弦が、ブリッジにしっかり固定されている。
- ブリッジピンが浮いていない。
- 弦がペグの上で重なっていない。
- ペグを巻く向きがそろっている。
- チューニングを2〜3回くり返して、音程が落ち着いてきた。
- 余った弦の先端を安全に処理した。
- 指板やボディの汚れを拭き取った。
弾き終わったあとに、乾いた柔らかい布で弦を軽く拭く習慣をつけると、弦を良い状態で保ちやすくなるといわれています。保管の工夫はギターの保管とお手入れの記事も参考にしてください。
よくある質問
弦は、全部まとめて替えたほうがよいですか。
一般に、全弦を同時に替えると、音のバランスがそろいやすいといわれます。1本だけ切れたときに、その弦だけを替えることもできますが、ほかの弦と音色に差が出ることがあります。
古い弦は、どう捨てればよいですか。
お住まいの地域のごみの分別ルールに従ってください。先端が鋭いので、紙などで包んでから捨てると安全です。
初心者が自分で交換しても大丈夫ですか。
手順を守れば、自分で交換できます。不安なときは、楽器店に頼んで、やり方を見せてもらうのも、よい方法です。
弦を替えたら、音がビビるようになりました。弦のせいですか。
弦が原因とは限りません。新しい弦に替えて音の出方が変わり、これまで気づかなかったビビりが目立つこともあります。押さえ方や弦の収まりなど、いくつかの要因が考えられます。気になるときは、楽器店で見てもらうと安心です。
弦を替えたあと、何日もチューニングが安定しません。
新しい弦は伸びるため、しばらくは音程が下がりやすくなります。目安として、数日弾くうちに落ち着くことが多いといわれています。弾く前にチューナーで合わせる習慣をつけましょう。極端に狂うときや、ペグが空回りするときは、巻き方やペグの状態を見直してください。
まとめ
弦交換は、ギターを長く楽しむための基本的なお手入れです。準備と手順を押さえて、焦らず1本ずつ、確実に作業しましょう。

